鶏ぼっかけに命を学ぶ_シティ情報ふくおか

鶏を煮炊きすると、台所が甘いほんわかした香りに満たされる。この香りを嗅ぐと幸せな気分になるのはなぜだろうー
大野城市で昔から作られているという郷土料理「鶏ぼっかけ」。嫁いできた上大利で長年「鶏ぼっかけ」を作ってきたという井上幸子さんのお宅にお邪魔した。今日はちょうど会合があるとかで、朝から大きな鍋には鶏がらスープが仕込まれていた。
「昔は、どこの家の庭にも鶏が(ニワトリ)がいたの。お祝い事や大事なお客さまが来る日は、決まって鶏をつぶしてご馳走にしてたんです。今聞くと残酷ですけど、昔はそれが”おご馳走”だったんです。だからお客さまが来ると聞くと子どもたちは皆『あ、鶏が食べられる!』って喜んだものなんです。今みたいにいろんな食材が手に入る時代じゃなかったけど、畑には野菜があり、庭には鶏がいたから、それを使ってすぐ料理ができたのよ。究極の産直よね(笑)」
幸子さんは50年前に朝倉から大野城(当時は大野町)に嫁いで来て、そこで初めて「鶏ぼっかけ」という料理を知ったという。当時、ご主人の父親が区長だったこともあり、お客さんが多く、その度にこの「鶏ぼっかけ」が振る舞われた。「鶏ぼっかけ」は主に酒宴の〆に食べれるものらしく、鶏ガラ出汁に鶏肉を入れて煮て、最後に醤油で味をつけ、それをご飯に”ぼっかけて”しゃぶしゃぶとお茶漬けのようにして食べていたという。
「料理の起源や、うちの作り方が正しいかどうかなんてわからないの。我が家に伝わる通りに作っているだけよ」
昔は外からお嫁さんが来てそこの家の料理の味を引き継いだ。でも時代に合わせて少しずつ変わっていくもので、幸子さんは、鶏肉をスープに入れる前に一度フライパンで炒めるそうだ。そうすると油の甘みと香ばしさが加わり、より美味しくなるのだとか。

醤油は二日市の老舗「ゑびす醤油」を使う。ここは変えていない。市販の醤油よりちょっと甘いそうだ。お茶碗に白ごはんを少なめによそい、鶏肉とスープをかける。野菜は入っていない。すすってみて初めてわかった。想像より実にアッサリして、サラサラと食べられ、しかもじんわりくる滋味深く、幸福感に包まれていく…そんな感じ。子どもが病気をした時や食欲がわかない時にも作ってあげたそうだ。付け合わせの大根の漬物がまたうまい。
「ちょっともの足りないなっていうくらいがちょうどいいのよ」
美味しさのあまり、おかわりしたい衝動に駆られるが、不思議と満足感がある。「どーぉ?美味しいでしょ?」
幸子さんは年に1回、この「鶏ぼっかっけ」のお話を聞かせるために大利小学校へ出かける。子どもたちには、鶏をつぶすシーンも包み隠さずリアルに話すという。「私が子どもの頃、まず親が鶏を捕まえてきて首を絞めるんです。でもすぐには死なないの…。苦しんで、もがいて…命をいただく前にはそういう苦しみがあるんだなって…。みんなが口に入れる野菜でも肉でもなんでも、口に入れる前はみんな生きていたの。あなたたちと同じように生きていたの。それをいただいているの。だから大事に食べなきゃって、子どもたちに話すんです」。子どもたちはその後、その話を元にした劇を作って発表する。。鶏を絞めるシーンも羽をむしるシーンもちゃんと演じられているそうだ。
きれいにさばかれてスーパーに並ぶ肉の塊から「命をいただいている」ことを想像するのは難しい。しかし幸子さんの「鶏ぼっかけ」の話は、単に郷土料理の話だけではなく、「命をいただいくことのありがたさ」をわかりやすく子どもたちに教えられる、またとない機会となっている。

シティ情報ふくおか 特別編集 ウェルカム大野城市!より

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